実用イタリア語検定掲示板
動詞の不定詞と代名詞の結合について - STP
2024/03/25 (Mon) 22:03:19
いつも検定試験の過去問で勉強しています。多くのことが学べて大変勉強になっています。ありがとうございます。
動詞の不定詞と補語人称代名詞の結合について教えて下さい。
2015年秋3級のN48の解説に以下のような説明があります。
「なお選択肢の中にはありませんが、devo andare a comprarliの形でもかまいません。」
(この問いの正解は、Ce li hai o devo andarli a comprare)
一方、2021年準2級のN40の解説には以下の説明があります。
「移動を表す動詞が、ここのandareのように不定詞の場合、補語人称代名詞は移動を表す動詞の方に付けます。」
(この問いの正解は、Ho chiesto a Francesca di andarmi a comprare delle uova)
2015年の方の解説に従えば、2021年の問いも、選択肢の中にはないものの、Ho chiesto a Francesca di andare a comprarmi delle uova でも構わない、という判断でよろしいでしょうか。
「代名詞は移動を表す動詞の方に付けます」と断定しているので、comprareの方につけてはいけないかのようなのですが、どちらでもいいのでしょうか。
春季の受験が終わった直後でご多忙だと思いますので、返信は全く急ぎません。
いつでも構いませんので、ご返信いただけましたら幸いです。よろしくお願い致します。
Re: 動詞の不定詞と代名詞の結合について - 伊検事務局 URL
2024/03/29 (Fri) 14:04:42
補語人称代名詞の位置に関するご質問への回答として、まずGrande Grammatica Italiana di Consultazione, a cura di Lorenzo Renzi - Giampaolo Salvi - Anna Cardinaletti, in tre voll. の第1巻586-588ページの内容を、かいつまんで紹介します。
従属節が不定詞のとき、その補語人称代名詞は主節に移動できます(ただし、主節と従属節の主語は同じ)。
Carlo andrà a comprarlo.(北部に多い)
Carlo lo andrà a comprare.(トスカーナと中・南部に多い)
この移動は、主節の動詞が、
a) 補助動詞:volere, potere, dovere, sapere
b) アスペクト(開始、継続、終了)を表す動詞:cominciare, continuare, finire
c) 移動を表す動詞:andare, venire, tornare
などのときに可能です。したがって、以下のように、2通りに表現できます。
Mario vuole farlo da solo.
Mario lo vuole fare da solo.
La mamma comincerà a cucirla domani.
La mamma la comincerà a cucire domani.
Piero andò a chiamarlo.
Piero lo andò a chiamare.
上記以外の動詞のときは、補語人称代名詞の移動は不可です。
可:Aldo ha deciso di leggerlo.
不可:Aldo lo ha deciso di leggere.
可:Maria dice di scriverla domani.
不可:Maria la dice di scrivere domani.
補語人称代名詞を移動できる動詞が2つあるとき(ここでは、cominciareとpotere)、そのどちらにも移動することができます。
Mario comincia a poter farlo.(やや不自然な文)
Mario comincia a poterlo fare.
Mario lo comincia a poter fare.
移動を引き起こす動詞が不定詞のとき(ここでは、sapere)、必ず移動します。
不可:Carlo ha detto di saper farlo.
可:Carlo ha detto di saperlo fare.
Grande Grammaticaの紹介は以上です。
2015年春季、3級N48の解説「なお選択肢の中にはありませんが、devo andare a comprarliの形でもかまいません」は、上記例文の、「Mario comincia a poter farlo.(やや不自然な文)」に対応します。Grande Grammaticaでは「やや不自然」とされていますが、Googleでフレーズ検索をしてみると、
"devo andare a comprarli" 約1560件
"devo andarli a comprare" 約694件
"li devo andare a comprare" 約1250件
という結果で、実際には多く使用されているようです。
2021年秋季、準2級N 40の解説「移動を表す動詞が、ここのandareのように不定詞の場合、補語人称代名詞は移動を表す動詞の方に付けます」は、上記例文の、「可:Carlo ha detto di saperlo fare.」に対応します。
ご質問「Ho chiesto a Francesca di andare a comprarmi delle uova でも構わない、という判断でよろしいでしょうか」は、上記例文の「不可:Carlo ha detto di saper farlo.」に対応します。Googleでフレーズ検索をしてみると、
"chiesto di andarmi a comprare" 約201件
"chiesto di andare a comprarmi" 約3件
と出てきます。ただ、「約201件」の方も、異なるサイトに載っている同じフレーズを何回もカウントしていて、実際の件数はより少ないようです。
3つ並んだ動詞の1つ目に、2015年の方ではdovere(代名詞の移動可)が使われ、2021年の方ではchiedere(代名詞の移動不可)が使われていますので、同じようには扱えないことに注意してください。
Re: 動詞の不定詞と代名詞の結合について - STP
2024/03/30 (Sat) 22:47:02
お忙しい中、こんなにも詳しく丁寧に解説下さり、本当にありがとうございます。
代名詞の移動の可否に、主節の動詞の種類が関係しているとは知りませんでした。教えて下さってありがとうございます。
ただ、主節の動詞が
a)補助動詞
b)アスペクト
c)移動を表す動詞
以外の場合は「補語人称代名詞の移動は不可」ということなのですが、
(〇) Devo andarli a comprare
(〇) Devo andare a comprarli
であるのに
(〇) Carlo ha detto di saperlo fare
(×) Carlo ha detto di saper farlo
(〇) Ho chiesto a Francesca di andarmi a comprare delle uova
(×) Ho chiesto a Francesca di andare a comprarmi delle uova
であるのがなぜなのかやはりよく理解できません。
複数のイタリア人と、ネイティブとのQ&Aのサイトに聞いてみたところ、2つ目の例はsaperlo fareの方が一般的であるにしても、いずれも文法的には両方とも正しく、ニュアンスの違いや、話者の主観の問題だという一致した回答でした。
3つ目の例は、andarmiは「私のために行って来てくれるよう頼んだ」、comprarmiは「私のために買ってくれるよう頼んだ」の違いなので、言っていることはほとんど変わらない、という回答もありました。
同じ「andare+補語人称代名詞」なのに、dovereの場合は「可」で、chiedereの場合は「不可」なのが不思議で、これは「可」「不可」というよりも、「どちらかというとこちらの方が自然」という範疇なのではないかと思うのですが、間違っているでしょうか。
Ho chiesto di andarmi a comprare
Ho chiesto di andare a comprarmi
これのどちらかを選ばなくてはいけない問いは試験には出ないとは思いますが、今後のためにもクリアにしておきたいと思いました。
もし可能でしたら、ご返信いただけますと幸いです。
Re: 動詞の不定詞と代名詞の結合について - 伊検事務局 URL
2024/03/31 (Sun) 20:45:30
ご自分でも調べいただき、熱心にご勉強されていますね! イタリア語の「実用」という面では、こちらから説明を付け加えることはありません。
> (×) Carlo ha detto di saper farlo
> であるのがなぜなのかやはりよく理解できません。
これは「実用」の域を越えているようです。Grande Grammaticaでは、この例文の前に「*」が付いていて、agrammaticale, inaccettabileを意味します。
一方、例文 Mario comincia a poter farlo. の前には「?」が付いていて、leggermente anomalo, non perfettamente accettabileを意味します。
例文の画像を添付しますので、ご参照ください。
Grande Grammaticaは2022年のリプリント版を使っていて、Errata corrige(正誤表)が第1巻だけで7ページありますが、この部分についての修正や補足は無しです。
さらに調べるには、“salita del clitico” や “salita dei pronomi clitici” といったキーワードで検索してみてください。
Re: 動詞の不定詞と代名詞の結合について - STP
2024/04/01 (Mon) 09:46:20
ご返信いただきまして、ありがとうございます。
> Carlo continua a saperlo fare
> Carlo ha detto di saperlo fare
これは、主節の動詞がなんであれ、代名詞は補助動詞dovere/potere/volere/sapereの方に結合させるのが一般的である、という回答をネイティブの人からもらいましたので納得できました。
最初に解説いただいた、
>3つ並んだ動詞の1つ目に、2015年の方ではdovere(代名詞の移動可)が使われ、2021年の方ではchiedere(代名詞の移動不可)が使われていますので、同じようには扱えないことに注意してください。
つまりは、
(〇) Devo andarli a comprare
(〇) Devo andare a comprarli
(〇) Ho chiesto a Francesca di andarmi a comprare delle uova
(×) Ho chiesto a Francesca di andare a comprarmi delle uova
ということになりますが、なぜ同じように扱えないのかが分からない、という質問をさせていただいたのでした。
でもこれ以上お手数をおかけするのは申し訳ありませんので、
>andarmiは「私のために行って来てくれるよう頼んだ」、comprarmiは「私のために買ってくれるよう頼んだ」の違いなので、言っていることはほとんど変わらない
これに則って判断することに致します。
いや、そうではないよ!ということでしたらまたご指摘下さると有難いです。
ありがとうございました。
Re: 動詞の不定詞と代名詞の結合について - 伊検事務局 URL
2024/04/01 (Mon) 15:19:25
STP様
今回は試験問題検証委員および過去問題集解説執筆者の双方からの回答を合本してお答えいたしましたが、十分ではないにせよ、なんとかご納得いただけたようで嬉しいです。先生方も「ここまで熱心に勉強していらっしゃる方なので」と、快く解説を送ってくださいました。
これからもどうぞご精進なさって下さい!